ADの引継ぎ期間、前任のM氏からしきりにそう告げられたのを憶えています。M氏はその忠告について多くを語らなかったし、僕も深くは触れないようにしていました。
 
なによりM氏の腹回りをたわわに構築する贅肉が“関われば太る”という奇怪な法則に説得力を持たせていました。
 

だからこそ僕は――僕だけはそうなるまいと固く決意していたのです。
 
ところがある日、湯殿でふと足下を見ると、腹の丸みで爪先が隠れている事に気づきました。体重計に乗りゾッとしました。AD就任から1年で、僕は10キロ太っていたのです。
 

今想えば“腹ペコADが行く”のコーナーでは飽食の限りを尽くし、ロケ弁当が残ればすかさず持ち帰り、制作部への来客がもたらす土産も気づけば手中に収めるアリサマ。それに留まらず夜更かし・運動不足・ストレスという太るべき布石を団子のごとく一刺しに生活していたのです。太らないワケがない。
 
「おのずと太る」

M氏が耳もとで囁いた気がして、僕は身震いしました。ぴやーと意味不明な悲鳴をあげて湯殿を飛びだし、頭を抱えて散々に床を跳ね回りました。そして、ひとしきり暴れまわると決意したのです。
 
よし、痩せよう、と。
 
　次回より、ダイエット企画を連載する所存であります。