19:52 更新
政府の備蓄米について農水省は14日、数量や平均価格など入札結果を公表する見込みです。
備蓄米は大分県内にも十分出回るのか、そしてコメの価格は下がるのか関係者を取材しました。
5キロ4000円台も珍しいことではなくなった日本の主食。
大分市中心部で90年続く米穀店の3代目山川富弘さんは、大分県内でも値上がりが続く中、馴染みの常連客のためにできるだけ価格を抑えて販売しています。
常連客
「スーパーに行ったら4000円以上することろが多い。この人が売るなら変なものは売らないという信用がある。それぐらい信用しないと50何年続かない」
山川さんは農家から直接仕入れることで価格を抑えることができていますが、新米が出た2024年秋、長年取り引きを続けている農家とのやり取りで驚くことがあったそうです。
山川富弘さん
「福岡の人が(農家の)ライスセンターにトラックを横付けして(高値で)持っていかれた。2回(入札の)やり取りをしたが(業者の金額に)追い付かなくて辞退した例があった。取引があったうちにゼロになるとは想像していなかった。去年に関しては予定と全然違った。悲しいのもあるが仕方ないというのが本音」
品切れを避けるため、農家が抱える少ない在庫を探し回って仕入れるなど苦心してきました。
こうした事態は山川さんのお店だけではありません。
JA全農おおいた米穀園芸部 松本邦博部長
「JAグループでは令和6年産の米の集荷量は集まらなかったという実態がある」
JA全農おおいたによりますと、2024年の秋は新米の集荷量が例年に比べて3割程度減りました。
ここまでの落ち込みは初めてだそうで、その理由は農家の高齢化や猛暑による生産量の減少だけでなく、大分県外の業者による買い占めなど競争の過熱がありました。
このため十分な量が確保できず、大分県内の卸売り業者は新たな購入先を探したり納品する数を抑えたりと苦労を強いられています。
政府は備蓄米の放出を決め14日、入札結果が出る見込みです。
全農は本部が入札に参加。
全農おおいたは本部に希望する量を申し込みました。
備蓄米の放出でコメの値段は下がるのか。
そして、農家が話す高く買い上げる流通業者の驚き行動とは
2024年の秋に新米が出ましたが、むしろ値段が上がっている印象もあります。
全国でもいわゆるコメの争奪戦というのが起きています。
今回、由布市のコメ農家の男性に話を聞きました。
この男性は毎年6000キロを作って個人や飲食店に販売しています。
ところが2024年12月から2025年にかけて、福岡から2人組の業者がトラックでやって来て「米を売ってくれないか?」と現金を持って来たそうです。
さらに、まだ苗も植えていない状態にもかかわらず「次の年の分を取っておいてほしい」と依頼されました。
その業者は農協の取引価格よりも30キロあたり2000円高い値段を提示してきたそうです。
もし6000キロすべてをその業者に売ったらこちらの農家はいつもよりプラス40万円のもうけになる計算です。
業者に一部売って残りは取引先への出荷を優先しました。
男性によると業者は地域の農家全てを回って同様の話をしていたと言います。
こうした異常事態もそもそもコメの不足が要因なんですが、その解消の一手として政府が決定したのが「備蓄米の放出」です。
政府が保有する備蓄米は約91万トンで、うち21万トンを放出する予定です。
小売店にその備蓄米が並ぶのは3月下旬ごろになるのではとみられています。
この放出について、JA全農おおいたの松本邦博部長は「放出される備蓄米は消費量から比べると少ない。ただ流通量が増えることで市場の価格が下がり、在庫を持っている業者がコメを手放し不足の解消につながることに期待したい」と話しています。
備蓄米が十分に出回るのか、そのほかのコメの価格も下がるのか、注目していきたいです。