19:28 更新
194kmのスピードを出して起こした事故は危険運転に当たるかが問われた裁判員裁判。
大分地裁は被告の男に懲役8年を言い渡しました。危険運転致死罪を認めています。
小栗アナウンサー
「過失か危険運転か注目の裁判の判決が言い渡されます。多くの人が傍聴券を求めて並んでいます」
午後3時からの判決を前におよそ70席の傍聴券を求め大分地裁には400人近くが並びました。
小栗アナウンサー
「午後2時40分、亡くなった小柳さんの遺族らが大分地裁に入って行きます」
28日開かれた裁判員裁判の判決公判。
大分地裁の辛島靖崇裁判長は「一般道で常軌を逸した速度を出して運転したことは危険極まりない」と指摘しました。
その上で、「速いスピードで常習的に運転し加速するのを楽しむために犯行に及んだことは厳しい非難に値する」として被告の男に懲役8年の実刑判決を言い渡しました。
判決を受けて、2人の裁判員が会見に応じました。
日田市に住む50代の会社員の男性は「進行を制御するのが困難な速度という点を判断するのが難しかった。亡くなった人がいることと若い人の人生がかかっていると思うと判決を出すのに重みを感じた」と話しました。
また、大分市の40代の会社員の男性は「1人の命が失われている事故で裁判に対して重みやプレッシャーを感じていた。
協議した上で納得のいく判決が出た」と話しました。
今回の事故は「危険運転」に。
裁判官と裁判員がなぜその判断を下したのか
詳しく解説します。
小栗アナウンサー
全国的にも注目された今回の裁判員裁判。
「危険運転致死罪」が認められ懲役8年の実刑判決が出されました。
危険運転かどうかの判断には争点が2つありました。
まず「被告の車が制御困難な高速度だったか」です。
検察側は194キロで走ると視野が狭まり少しの運転ミスで事故を起こす恐れがあるとして制御困難だったと主張。
一方、弁護側は、「ぶつかるまでまっすぐ走れていた」として「制御できていた」と主張していました。
これに対し裁判長は「車を夜高速度で運転すると視野が狭くなる傾向がある直線であっても路面状況から大きな揺れが生じたりハンドルやブレーキ操作のミスが起こり得ることは否定できない」として制御困難な高速度だったといえると判断しました。
もう1つの争点は「妨害運転かどうか」です。
検察側は「被告が右折車に気づいても衝突は避けられず右折車に急な回避行動を取らせるしかない」として「妨害運転にあたる」と主張。
一方、弁護側は「右折してくる特定の車の通行を積極的に妨害する意図はなかった」として「妨害運転ではない」と主張しました。
その妨害運転に関して裁判長は「危険を冒してまで高速度走行に及んだものとは認めがたく、通行を妨害する目的があったとは認められない」として「妨害目的」については認めませんでした。
今回の判決を受けて遺族らが心境を語りました。
長文恵さん
「まずは私が戦ってきた危険運転致死罪で認められる判決になったのはとても大きなこと。ただ4号(通行の妨害)について認められないということは残念なことだった」
亡くなった小柳さんの姉・長文恵さん。
これまで2年以上にわたって事故は「危険運転」だったと訴えてきました。
被告に言い渡された「懲役8年」の量刑については複雑な心境を明かしました。
長文恵さん
「(懲役)8年というのを聞いたときにそのあとの裁判長の話は全く耳に入らない。7年を超えているのは危険運転が認められたと思った。私にとって良い判決と思うのかそうでないのか悩ましい量刑」
改めて、28日大分地裁は被告に懲役8年の判決を言い渡しました。
これを受け検察は、「検察官の主張が一部受け入れられなかったことは遺憾である」とコメントし、今後については協議し適切に対応したいとしています。
一方で、弁護側は「控訴の有無についてはコメントを差し控える」としたうえで、「判決内容をこれから精査する」とコメントしています。
福岡高裁への控訴期限は28日から2週間です。