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2013.03.23放送
大分の美術館~学芸員おすすめの作品~
近代の日本画壇をリードした、福田平八郎や高山辰雄。「東洋のロダン」と呼ばれた彫刻家・朝倉文夫に、人間国宝となった竹工芸家・生野祥雲斎。今週は、県内の美術館をめぐりながら学芸員おすすめの作品を紹介します!
まずは、60年以上の歴史がある別府市美術館。独自のコレクションをはじめ、宇治山哲平など郷土大分を代表する作家の作品も展示しています。こちらのおすすめは、大阪出身の洋画家・小出楢重の「卓上草花」。背景の濃いブルーに赤い花が際立っているのが印象的です。洋画なのに縦長であるのは、日本画の掛け軸をイメージしたものだそう。花瓶や花、床のカーペットの色味を揃え、バランスが整った構図が特徴となっています。
続いて訪れたのが、大分市美術館。高山辰雄の日本画など大分ゆかりの作家の作品を中心に展示しています。おすすめは、生野祥雲斎作「乱菊」。3輪の菊の花びらがまるで風にたなびいているような繊細な作品で、以前は東京丸の内のホテルの有名レストランに飾られていたものです。雄蕊や雌蕊も細いひごを使って丁寧に表現されていて、これまでに見たことがあった祥雲斎の作品とは違った一面が感じられました。祥雲斎は1904年に別府市で生まれ、若い頃に竹工芸の作品に魅了されてこの世界へと足を踏み入れました。69歳で亡くなるまで大分で創作活動をし、竹工芸家として初めて人間国宝となっています。
続いては、竹田市中心部にある竹田市立歴史資料館へと行ってみました。岡藩の古文書や南画など、歴史が感じられる場所です。学芸員さんおすすめは、江戸時代の南画家・田能村竹田の「河豚図」。竹田の最古の作品といわれ、目つきの鋭い河豚が水の中を悠々と泳いでいる様子が描かれています。白黒に見えますが実は薄く赤や黄色、青などで色も施されていて、竹田の色彩感覚がどれだけ優れていたかがうかがえます。
そして、豊後大野市朝地町にあるのが、彫刻家・朝倉文夫の記念館。1883年に生まれ、自然主義的写実主義を貫いた朝倉。1947年に造った女性像は、実の娘の摂と響子をモデルとして、日本人女性の筋肉の柔らかさや曲線美を表現しています。あるがままの姿だけではなく人物の内面性も捉えた作風は、多くの人々が感銘を受けました。
最後に訪れたのは、県立芸術会館。35年近くに渡って大分県の芸術文化の拠点として機能してきました。4800点の収蔵品の中からおすすめの作品は、福田平八郎の「鮎」。芸館収蔵第一号で、川底を泳ぐ鮎と石の配置が絶妙な構図で描かれています。
この芸術会館に代わって2015年には県立美術館がオープンします。芸術会館のコレクションは常設展示で見られるようになる予定で、県民に愛される美術館を目指して整備が進められています。